2026年10月11日
立場や役割がやるべきことを決める
Cobe Associe は、戦略と技術の問いを現場で検証可能な仮説に変えます。
昇進したり、転職したりして、肩書きや役割が変わったときにその人格が現れる。
「私は優秀なのだから、新しいところでもこのまま、自身らしくやっていこう」と考える人がいる。まともには言わないけれど、この思考に従って動いていると推測される社会人はかなりいて、会うたびに哀しい気持ちになる。学生気分が抜けない新卒はまだしょうがない。担当者マインドのままの管理職や、部課を率いる執行者視点を引きずった経営陣にあうと組織としての根深さを感じる。
「肩書きや役割にはそれに応じた固有の考え方があるはずで、自分はそれに従わなければならない。何かを変えなくてはいけない」と考える人は希少であり、同時に価値を生み出す人間である。勤勉さが尊いものであると語ったマックス・ウェーバーの『プロ倫』の中に、仕事を天命/Vocationの文脈で語る箇所があるのは、仕事とは本質的に受動的なものであることを示唆している。情熱/Passionと受動的/Passiveの語源は同じ(ラテン語で”耐える、苦しむ、何かを被る”を意味する patī)である。
2026年8月21日号の日経ビジネスのメイン特集『ジョブ型雇用の落とし穴』を読むと、職務定義や評価、機敏かつ安定的な運用の難しさが課題として指摘されている。しかし思うに、役職や役割についての認識エラーが問題の根源だ。
『優秀な私』を普遍の前提にして、新たな役割をただこなすというのでは組織は動かないのだ。「俺はこのやり方で認められてきたんだから」なにゆーてんねん。前の部署の勝ち筋をそのまま持ち込み、自分を曲げないのが矜持だと信じている人が大量にいる。アホの所業である。
1969年、カナダの教育者ローレンス・ピーターは「人は無能になる地位まで昇進する」と書いた。有名な階層論、ピーターの法則である。有能な課長が無能な部長になる理由を、ピーターは能力の天井で説明した。端的に、それは違うと思う。課長の動きをそのまま部長室に持ち込むから無能に見えるだけだ。
将棋の歩は敵陣に入ると成って、金と同じ動きになる。ただし取られて相手の持ち駒になれば、ただの歩に戻る。と金の動きは本人の実力ではなく、盤上の位置が貸与しているものにすぎない。その自覚がある駒だけが金として輝くのだ。
立場や役割があなたを変える。まずそれを受けとめるべきだ。その上でできることを最大限に。優秀だという評価は後からついてくる。自分らしく、でスベり続けるおっさんはただただイタいぞ。
お便りをお待ちしています。
💼心惹かれた
廻転寿司 佐渡弁慶@新潟:本店は佐渡島なのですが支店が新潟市にあります。めちゃくちゃうまかった。迷わず最高額のランチセットを注文してください。 link
さまざまなお麩@新潟:寒くなると食べたくなる。おでんやお吸い物に最高。岩船麩がうまいぞ。 link
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
カタールの自慢が空振る日々:4年前、ロシアのパイプラインを失った欧州が頼った同国のエネルギー相は「26年以上、一度も出荷を滞らせたことはない」と語った。今年3月、ホルムズ海峡の封鎖でカタールは不可抗力を宣言。以後の出荷は98件に留まり前年同期比536件減、不足分は3,900万トンで世界供給の9%にのぼる。アジアのLNG価格は今年初比140%高。夏に軽油などの貯蔵を十分に積めなかった欧州には冬が迫り、「いつか値下がりがくるだろう」と買い控えるギャンブラーにも破綻が迫っている。新規案件の開発も進んでいるため、2030年には供給過剰に転じる可能性も指摘されているが、足りないときに失われるのは金だけではなく人命にも及ぶかもしれないのだ。link
米テキサスに並ぶ474GW分の行列:2024年末時点で、テキサスの送電網事業者が接続を待たせていた新規の大口顧客は63GW分だったが、2026年6月には474GWと過去最高のピーク需要の5倍超となり、うち9割がデータセンターである。州は接続依頼者に対して電力網増強費の自己負担を命じ、やがて新規許可を全面凍結した。a16zのMcEntushは理由を電力側の構造から紐解いている。顧客もGPUも持たない投機的な申請が複数サイトで乱発され、送電網業者は本物の判定に苦慮している。住民は騒音と電気代の上がり幅に怯え、企業は伸び続ける時間軸を不確実性として用地探しを続けている。link
中国の『語られない』50年:今年の10月6日は、文化大革命の公式な終結からちょうど50年になる。毛沢東の気まぐれ統治からの転換が、その後の半世紀の成長の土台になった。にもかかわらずまともな祝典は予定されていない。党は過去の誤りを検証することを嫌い、否定的な評価を下したまま封印を続けている。展示施設は閉鎖されており、若者にはその歴史を全く知らない人も多い。成功の起点を語れない組織は、失敗の教訓も語れないだろう。社史には成功も失敗も書くべきなのだ。国史も同様であるはずだ。link
インドの占星術市場:年70億ドルにもなり、成人の44%が全部または部分的に信じている(日本でいうおみくじくらいの感じ?)。11月のディワリには証券ブローカーが縁起が良いとされる時間にわざわざ集まり、ボンベイ証券取引所のロビーでラクシュミー神に祈る習慣がある。ファンドマネジャーの一人は、ファンダメンタルズをエンジン、占星術をハンドルと霧灯にたとえた。中国と台湾を対象にした研究によれば、縁起の良い数字で投資するとむしろ成績が下がるという。確かに論拠不明なバイアスだから、是正曲面で損失を出すのだろう。もっとも西側のトレーディングフロアでも幸運のネクタイと「ヘッドアンドショルダー」の文化は生きている。市場がランダムに見えるほど、人は何かに掴まりたくなるのだろう。link
政府自身が仲人になり始めた:シンガポール政府が21〜35歳の公務員向けのデートアプリ・FirstDateを始めた。国民デジタルIDでログインし、興味と習慣と価値観の質問に答えると、一度に一人だけ相手が紹介される。「スワイプ疲れはここで終わる」がうたい文句。中身はGale-Shapleyの安定結婚アルゴリズムで、Shapleyはこの研究に関連して2012年にノーベル経済学賞を受けている。公立校の入学選抜や研修医のマッチングに使われてきた仕組みが、出生率が過去最低の国で恋愛に転用されはじめている。反応は「そこまでやるとはディストピア」から「試してみたい」まで様々。現状は試験運用で拡大は未定。ちょうど『侍女の物語』を読んでおり、50年前の小説と現実が交叉した。link
『考えない』という選択の行く末:ゲームで背景を歩く無名キャラ・NPC(ノンプレイヤーキャラクター)は、割り当てられた行動と用意された台詞しか持たない。現実世界にもNPCはいる。思考も意見もメディアや専門家集団にプログラムされ、欲望を含めてあらゆるものが借り物で、自ら考えた形跡はどこにもない。ニーチェは19世紀に「世論に支配された偽りの人間」が社会を満たすと書き、フロムはそれを”自動人形”と呼んだ。現代社会はNPCを量産し、彼らは権威主義を熱烈に支持することで安定した社会が実現している。公教育と支配的育児、メディアがその製造装置である。考えない、という選択肢を採る/採らされる結果がいま現在の社会の形である。link
専制政治は、自らの信念を行動に移す勇気を持たない臆病な男たちによって永続される。(スタンレー・ミルグラム『権威への服従』)
ダッシュボードが奪う主体性:1805年10月21日のトラファルガー沖。ネルソン提督が指揮する27隻は仏西連合の33隻に向かい、平行線の定石を捨てて敵陣に真正面から突っ込んだ。黒色火薬の煙で信号旗は見えなくなる。だから戦闘前に各艦長へ意図を共有し、あとは各自で動け!と事前伝達し、見事勝利を勝ち取った。現代の経営についてこの思考を転写して考えてみよう。ダッシュボードで数字を追う管理は、平時に慎重で安全志向の人を育て、危機が来た瞬間に何も指示できない管理職を生み出すことになる。信頼は採用と失敗への忍耐で前払いし、緊急時に主体性として回収する。ダッシュボードが使われない!という不満はよく聞くけれど、使われすぎる組織も問題を抱えているのだ。 link
博士課程生活の備忘録:「Wikipediaでわかることと真剣に研究した人がわかることの間」の話だった。学びの場に身を投じよう。 link
📙本
定本 江戸商売図絵:知り合いからおすすめされた図版本。パラパラめくっているだけで面白い。仕事はずっと多様だったし、これからも多様であり続ける。「栗のようにおいしいから」と芋屋さんが看板に『八里半(九里/栗に近い)』って書くのおしゃれ。 link
📻観た/聴いた
錦織圭選手 ユニクロイベント会見:お疲れさまでした!
Audible 宗教の本質:浄土真宗の僧侶で宗教学者の釈徹宗さんと批評家・随筆家の若松英輔さんの往復書簡集。集合体ではなく共同体。キリストも笑った。社会をよりよくするための宗教があるはずだ。 link
Audible 南京事件 新版:歴史を正しく振り返ろう。正しい認識から正しい行動が生まれるはずです。 link
🧩感じた/感じている
能登半島の先端、珠洲市に入ると前も後ろも車がいなくなった。復興が遠いことを肌で感じた一方、道路を直す人たちの努力を肌で感じた。本当におつかれさまです。
正反合と弁証法で韻踏める。コンセプトが近いし、音に出しても気持ちが良い。
事業を考える時間が減ると、組織のことばかり考えるようになる。規制業種など、努力以外のところで利益が生まれる会社はそうなりやすい。健康のことを考えすぎると不健康になるのと同じ
がんばりは累積量の勝負。下がりはじめた慣性を押し戻すのは容易じゃない。いま手癖に頼るのは、今日明日のパフォーマンスはいいかもしれないが、半年後、一年後にツケが来る。
🍵関心事
通算5期目の白玲獲得で棋士資格を獲得した西山朋佳白玲、果たして権利を行使するだろうか。明らかに西山白玲を意識したモノなのだけど、この制度には賛否あり、私はどちらかというと否側。権利は権利、どんな決め事になっても応援したい。
次はどこに車で出かけようか。
🥑活動報告
先週は神戸〜秋田・男鹿半島〜福島・猪苗代〜新潟〜長野・飯山〜富山・高岡〜能登半島〜福井〜神戸と、フェリー&車で大移動。発電と災害の現場を体感する、よい出張になりました。詳細は先週金曜配信日記を参照。
お便りをお待ちしています。
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